平壌(ピョンヤン)で朝食を。
著者:勝谷誠彦 (分野)小説/現代
出版:光文社文庫 定価:本体533円+税
2010年8月 初版第1刷
評価:★★★
この著者は、以前に西原理恵子関係の本で見たことがあった気がするので、手に取ってみた。やはりというかかなり過激な人物で、週刊文春の記者を最初はしていたそうだ。テレビのコメンテーターなどとしても呼ばれていたらしいが、最近すべて降板させられたそうだ。見れたら面白かったろうに残念だ。また、おそらくボクシングやプロレスのような格闘技もしているのだろう。体がよさそうだ。
この人がほかに小説を書いているかどうかは知らない。多分、ジャーナリストとしての仕事が忙しいためあまりしていないのだろう。それで、読んでみてなのだが、8編の短編からなっているがなかなか面白い。創造力も高いのだろうし、文章も日ごろ書き慣れているせいかうまいと思う。
ただ、私との感性の違いか残念ながらもう一度読みたいという作品はほとんどなかった。私には毒が強すぎて、読んだ後さわやかな気持ちにはなれないものが多い。時事ネタの負の面を題材に取っているせいなのでやむを得ないことと思う。また、登場人物についても友達にしたいという気にはなれない。たぶん私は、市井のもっと平凡な人物のほうが波長が合うのだろう、、、。
しかしその中で、「連絡船のうどん」の一作は文句なく良い。四国から本州へと移住する人間の覚悟と決意が伝わる作品になっており、最後のシーンも実によいと思う。これだけは、何度も読み返してしまった。私にとっての、「連絡船のうどん」は「天下一品」のラーメンだろうか? 京都で友達と食べた情景が目に浮かぶし、その後、東京や京都に旅行した時も何度か食べたが、やはり学生の時食べたほどはおいしく無く感じる。多分、それぞれの人が少なくとも一品くらいは「連絡船のうどん」のようなものをきっと心に持っているのだろう、、、。
他には、私も近鉄ファンだったので、「ナニワ金鉄道」もなかなか良かったが、登場人物が好きになれなかったのが残念だ。
次の作品が出たとして、たぶん買わないだろうな? いやでも買ってしまうかも、、。