トム君の書評

日々の生活の中での書評

不毛の言説 [国会答弁の中の日米関係] シリーズ[日米関係]10

著書:山本満 (責任監修:細谷千博)   分野:国際関係/政治

   企画・編集 国際大学 日米関係研究所

発行: Japan Times

1992年3月 初版

 

こちらも父の遺品で友人の山本先生の著作を見つけたので読んでみた。

題名の通り、かなり退屈な内容だが、読み通せたのはさすが山本先生のうまさだろうか?

すでに周知の事実かもしれないが、国会の討論が「不毛の言説」であることが日米関係に焦点を当てて語られている。この当時と比べて、今の国会答弁が質的に向上したなどということはもちろんない。むしろ劣化しているかもしれないが、よく聞いているわけでもないので、わからない。

対比として登場するのは国会答弁の質の高さがよく知られているイギリスである。ここでは国会答弁はまさに「ダモクレスの剣」。真剣勝負で失敗は許されない。

しかし不思議なのは、国としてみた場合日本がイギリスに劣っているとはとても思えない。経済でも技術でも日本のほうが上だと思うし、文化でも、まったく異質であるがほぼ匹敵するレベルではないかと思う。基礎科学や思想ではイギリスのほうが進んでいる気はするが、、。また世界にしてきたことといえばイギリスなど悪いことしかしていない気がする、、。それでいてこれほど国会では劣っているのはやはり教育のせいだろうか? 私自信も議論の重要性を痛感するようになったのは30歳過ぎてのことだ。まず自分の考えを持ったうえで、議論の中でそれを練り上げる過程を経ないと相変わらずアメリカから脅しを受けて、それから考えるという受け身の姿勢は変われないのだろう。困ったものだ。 

そういえば、私が子供のころ親父から言われたことは、男はあまり話すな、であった。それではだめだと思うが、そんなことを言う人が当時はまだ結構いた気がする。その後の教育も割と記憶重視だったことが今の日本を生んでいるようだ。

共産党の議論などももっともなところはあるが、きちんとした対案が示されているとは思えない。やはり何より待望されるのは「責任野党」であろう。