トム君の書評

日々の生活の中での書評

がんばれ大家さん! 賃貸住宅経営の50のヒント

評価:★

著者:税理士法人タクトコンサルティング 代表社員・税理士 本郷 尚 

出版:税理士法人タクトコンサルティング      分野:不動産/金融

2013/9 初版

2014/7 改訂新版4刷

定価:本体1200円+税

 

ずいぶんこのブログを書くのも久しぶりだ。最近、就職活動のためほとんど本読んでいないからな。それにしては、相変わらず就職は決まらないのだが。年も明けたので、心機一転というところだろう。

 この本は、一昨年の8月くらいに不動産セミナーに行ったときもらったものだ。著者の本郷さんはセミナー当日も講演していたし、最近あちこちで名前を聞くので非常に調子が良いらしい、、、。

 この本は、大家さんの心得やtipsをまとめたもので、体系的ではないが新しい情報なのはよい。私も不動産経営したいと思って、業者の人に相談などもしたが新規物件をささやかなたくわえから出すことは感心しないといわれた。失業中なのでローンなど通るわけないし、、、、。

 株や投資信託などもしているが、いつも情報にアンテナを張らねばならず大変な気がする。そう考えると大家さんのほうが良いようにも思えるが、人口は減る一方だし、法律も、市場も借り手有利だしで、やっぱり斜陽だろうか? それでも数は少ないが成功者はいるようだが、、。

 

喘息のベストコントロール法:喘息と診断された日から役に立つ

著者:久保裕(くぼひろし)

発行:合同出版       分野:健康/医学

初版:1993年5月

評価:★★★★★

 

普通の本ではないので、評価は私の私的なものである。

私は喘息があるが、これに対する愛憎は本当に深いものがある。2歳くらいからの付き合いになり、高校のころはかなり良くなったのでもしかして大人になればよくなるかと思ったのだが、結局そんなことはなかった。大人になっても長い付き合いが続いている。今年の夏も軽く罹ってしまい、ちょうど時間が割とあるので、治療法について調べてみた。しかし、やはり根本治療は相変わらず不可能らしい。大人になって喘息の人の9割は治らないそうだ。治療法は、結局ステロイドを一生吸入するしかないらしい、、、。わたしはこれに対しては何年か拒否反応を示していたが、今回この本をよく読んでみて、豊かな人生のためにはそれくらいは我慢しなくてはならないと感じた。

 

昔、母が入手してくれて、ざっと斜め読みしただけだったが、今回精読してみて新しい発見も多かった。

 ・喘息は、6人に1人しか遺伝しない。

 ・「様子を見る」とたいてい失敗する。兆候があれば、すぐ治療したほうが良い。

 ・喘息の原因:アレルゲン(主にダニ(ハウスダスト)。他にも、カビ、ブタクサ、

        花粉など多数)、食物、スポーツ、ストレス、疲労、

        光化学スモッグ、車の排気、季節の変わり目、低気圧、寒さ、暑さ、

        アスピリン、風邪、気管支炎、飲酒、喫煙、、、、、、

   (溜息)一体これらを避けて現代人が生きることが可能なのだろうか?

昔は、喘息は甘えが原因だと話す人(医者も含めて)がかなりいた気がする。私はそんな人を見ると怒鳴りつけたい衝動に駆られるが、とにかくそういう人種とは付き合わずに済めばそうしたいと思う。そうできない場合も多いのだが、、、。 

 

久保先生自身も、喘息患者だそうだ。そういわれてみると、喘息を持っている喘息医も多いのかもしれない。完治方法を見つけてもらえれば、ノーベル賞100個分に値すると思うが、、、。

 

それにしても、この本は情報としてはかなり古いので、喘息のことをきちんと知りたい人はもっと新しい本を読むべきだろう。もっとも、それほど進歩していないのが現状だと思われるが、、、。

久保先生は、喘息大学の校長も務められたということなので、ネットを少し調べてみたが、活動は昔ほど盛んではないらしい。共通認識を高めるというひとまずの役割は果たしたということだろう。

 

 

メキメキ頭がよくなる「超」思考法

著者:中川昌彦

出版:実務教育出版      分野:ビジネス

初版:2003年7月

評価:★★★

 

いつ買った本かも思い出せない。12年くらい前だろうか? 以前読んだかも思い出せない。たぶん一度は読んでいるのだと思う。2000年くらいまでは読書ノートをつけていたんだけど、その後はつけなくなってしまっている。

 この本は、アイディア発想の技法が10種類くらい述べられている。著者は125冊著書があるそうだから、なかなかすごい人なんだろう。私に関して言えば、この本に書かれているアイディア発想法は若いころはなかなか気が付かなくて、何年も働いていると半分くらいは身についた気がするけど、読んでみるとまだまだ役に立つことも多いという気がして、意外に良い本という気がする。

 最近心がけていることは、読んだ本は良いものであってもできるだけ処理してしまうことだが、(ものを減らさないときりがないので)この本だけはしぶしぶまた本立てにしまうことにする。良い本、感動を与える本というとまた別の問題だが、、、。

 

蒼氓

著者:石川達三         分野:小説/文学

出版:新潮文庫

初版:昭和26年12月

昭和61年10月 61刷

 

1930年、ブラジルに「ラプラタ丸」で向かう900人余りが収容所に収容されてから、ブラジルのサンパウロに到着して生活を始めるまでの様子が描かれている。

 第1部 蒼茫: 収容所生活 8日

 第2部 南海航路: ブラジル到着までの航海 45日

 第3部 声なき民: ブラジルに入植するまでの数日間

この小説は、特定の主人公がなくて、フォーカスが場面場面に次々に移る形で描かれている。特段珍しくもないのかもしれないが、雰囲気を現すのにはわかりやすい気がする。そのなかでも、印象的な人物が何人かいる。門馬家の老母とその二人の純真な息子。佐藤姉弟。監督の村松と、助監督の小水など。

 感じるのは、今から思えばはるかに厳しい環境での日本人の力強さと前向きさであり、苛烈な環境でももともと病人の死者一人のみで航海を乗り切り、移民たちが力強く生活し始めることである。こういうところは見習いたいが、私のように健康にやや不安のある人間にはしたくてもできないことかもしれない、、、。

 北杜夫が「輝ける青き空の下で」全4巻を戦後書いている。あとがきでは触れていなかった気がするが、この本をかなり意識して、この本を超えようとして書いたように思われる。(そして、実際内容的にはこの本よりはるかに盛沢山である)

 石川達三については、以前にほかの本も1冊くらい読んだ気がする。良い作家だと思うが、重厚で読んでて疲れた気がする。しかし、この本はかなり読みやすいし内容も良くて同じような文体ならまた読みたくなる気がする。

ある隻脚(片足)教授の一生

著書:清光照夫   分野:自伝/思想、経済

出版:近代文芸社

第1刷 2002年11月

 

父が友人だった、東京水産大学の経済学の教授だった清光先生の一冊。

自分史の一冊でやけに薄いのは学生生活がメインで就職されてからの記述が非常に短いためだ。これはなんでなんだろう? 詳しいことは書いてないのでわからないが、6歳で片足を失われたのだからそのご苦労は察するに余りある。しかし、そんな苦労をものともせず高校から家を離れて一人暮らしされているのだからさすがである。

学者なので、いろいろと思想上のことで言いたいことがあるのだろうと思うがこの本には、あまり詳しく書かれてはいない。ただ、わずかに述べられた中に感じられるのは、シュンペンターはマルクスに影響を受けていたと思われることとか、あるいは国を豊かにするには一人一人の欲望は抑えるべきだとか、共産主義への評価が感じられる一方で、愛する母が愛国婦人会に入っていて戦争が終わるとすぐ亡くなったことなども書かれているし、仏教や武士道への崇敬も感じられるので、かなりいろいろなものが入り混じった思想を持たれているのではないかと思われる。

それよりは、学生時代から培った交友関係とそれがその後の人生にどのような影響を与えたかが詳しく述べられている。私のようにほとんど友人などいない人間からすると、確かに親しい友人は確かに本当に良いものだと思う。

先生が亡くなられて10年になるのだろうか? 亡くなられた後でもこうやって出会えることはありがたいことだと思う。

不毛の言説 [国会答弁の中の日米関係] シリーズ[日米関係]10

著書:山本満 (責任監修:細谷千博)   分野:国際関係/政治

   企画・編集 国際大学 日米関係研究所

発行: Japan Times

1992年3月 初版

 

こちらも父の遺品で友人の山本先生の著作を見つけたので読んでみた。

題名の通り、かなり退屈な内容だが、読み通せたのはさすが山本先生のうまさだろうか?

すでに周知の事実かもしれないが、国会の討論が「不毛の言説」であることが日米関係に焦点を当てて語られている。この当時と比べて、今の国会答弁が質的に向上したなどということはもちろんない。むしろ劣化しているかもしれないが、よく聞いているわけでもないので、わからない。

対比として登場するのは国会答弁の質の高さがよく知られているイギリスである。ここでは国会答弁はまさに「ダモクレスの剣」。真剣勝負で失敗は許されない。

しかし不思議なのは、国としてみた場合日本がイギリスに劣っているとはとても思えない。経済でも技術でも日本のほうが上だと思うし、文化でも、まったく異質であるがほぼ匹敵するレベルではないかと思う。基礎科学や思想ではイギリスのほうが進んでいる気はするが、、。また世界にしてきたことといえばイギリスなど悪いことしかしていない気がする、、。それでいてこれほど国会では劣っているのはやはり教育のせいだろうか? 私自信も議論の重要性を痛感するようになったのは30歳過ぎてのことだ。まず自分の考えを持ったうえで、議論の中でそれを練り上げる過程を経ないと相変わらずアメリカから脅しを受けて、それから考えるという受け身の姿勢は変われないのだろう。困ったものだ。 

そういえば、私が子供のころ親父から言われたことは、男はあまり話すな、であった。それではだめだと思うが、そんなことを言う人が当時はまだ結構いた気がする。その後の教育も割と記憶重視だったことが今の日本を生んでいるようだ。

共産党の議論などももっともなところはあるが、きちんとした対案が示されているとは思えない。やはり何より待望されるのは「責任野党」であろう。     

血族

著書:山口瞳    分野:小説/文学

文春文庫

第1刷 昭和57年2月

第3刷 昭和57年6月

 

この本も父の遺品の中から見つけたものだ。第27回菊池寛賞受賞と後ろ書きにある。

山口瞳は、以前に「けっぱり先生」を読んだのと、この本を読んだだけだが、内容の良さはともかくやや重苦しくてくどい文章だ。軽快とは言えないので、面白くない内容だと放り出しそうだ。

ところで、この本に関してはこの文体と内容が見事にマッチしている。「血の塊」などというおどろおどろしい表現が面白さを引き立てている。

この話は、私が中学校くらいの時にNHKのTVドラマで見たことがある。当時、小林桂樹が演じていて、ぐいぐい引き込まれる内容に強烈なイメージを受けた。追いかけても追いかけてもなぞは晴れない、、、。最後にたどり着いた答えに主人公は複雑な表情を見せていた、、、。

こちらの原作ももちろん話はほとんど同じなのだが、事実はさらに複雑である。この話は作者の血族を描いたもので、想像はほとんどなく「小説」なのかもよくわからない。「私小説」というのとも少し違う気がする、、、。作者は50歳までこの問題を避けていたため、もっと若いころに探求していれば比較的簡単に答えにはたどり着けたのかもしれないが、その時になって始めたため現実には無数の壁に突き当たることになる、、、。最後の2章は、母の血族の探求に偏っていた内容が父側の話になるとともに全体の答えが暗示されて晴れ晴れとした気持ちになる。

私自身は、田舎から出てきた父と母だけの家庭に育ち、従兄弟も少なく伯父伯母は遠くに離れている人が多くて親戚というものが少ない環境だった。今になってみると少し寂しく思える。ちょうど作者と同じくらいの歳で父もなくなってしまったので、作者と同じような探求をしてみたい気がふとわいたりするが「いったい何のためか」と人に問われてきちんとした答えを持てる気がせずおそらく実行できないのかと思っている、、。