トム君の書評

日々の生活の中での書評

独りでやれるよ

著者:ごんだいらひろこ   分野:紀行文/随筆

出版:文芸社

2003年3月 初版

 

母の知り合いが書いた本である。おばさんが書いた本などおよそ予想がついて、だれだれさんが体調が悪くなって何とかの病気になって大変だが、現代医学は発達しているものだから、たいていは完全ではないがある程度よくなって、でも後遺症が残って大変だとか、自分の思いやりを装った内容だとかと読む前から予想されてあまり読む気にならないものが多い。

 この本はというと、実際そういう内容が多いのだがそれにしては退屈せず最後まで読んでしまえる(それでも、ややうっとうしかったが)のはやはり著者の筆力や語彙の豊富さなどだろう。海外旅行の話が8編あり、これらについては私が行ったところも、これから行きたいところもあって、共感や思い入れを感じる部分も多い。また、後半の随筆風日記部分も、亡父との思い出や初めてのパソコン体験などがあって以外に感動があり読める。著者は地元の同人誌で「コスモス文化大賞」をとられたそうだが、本書を読む限り納得する。母はまだ読んでいないそうだが、読めば喜ぶことと思う。

 

図解わかる! 不動産投資信託

'17/7/2 読了

監修:川口有一郎 ダイヤモンド社編著 分野:経済/金融

ダイヤモンド社

2001年4月初版

 

不動産投資信託REITが実際に株式市場で買えるようになってずいぶん日が経つ。一番古いもので2002年からではないかと思われる。この本が出たのはその前だから、時事性という意味では話にならない。

現状のREIT市場というのは実際この当時よりはるかに便利だとは思う。株式市場では、分散型と特化型の個別銘柄がある上に、ETFREIT指数がたのものもある。2008年ごろ何銘柄かは破たんしそうになったが、その後持ち直して、現在では以前の水準を超えているものが多い。私も何度か不動産の売買を経験したが、やはり不動産の最大の問題は流動性リスクだと思われるので、これを解決しインカムゲインも高いREITは素直にメリットの多い金融商品だと思う。

ただ、最近気になるのは株価が右肩上がりのものが多くて、時価総額が純資産価格をはるかに超えてしまったものが多く、バブルのにおいを感じる。

今後とも一般的な株式のオルタナティブとして、ミドルリスクミドルリターンのREITは活躍してほしい。

千年の嵐

2017年6月27日読了

著者:高橋佳子   分野:宗教/詩集

三宝出版

2000年3月 初版

 

私の母方の伯父伯母にGLA(God Light Assosiation)の信者の人がいて、よくこの手の本を送ってくるため、母も持て余している。うちにあるこの手の本は実は私だけが唯一の読者であろう。私も別に好きで読んでいるわけではなく、単に本好きなので仕方なく目を通しているに過ぎない。まだ何冊も厚い本が残っていて、正直困ったなと思っている、、、。

 

というわけだが、実はマイナス評価だけでもない。私が以前尊敬していた天文学者のH先生も実は信者らしい。この本は、機関誌や雑誌などで折々に書かれた詩を集めたものになっている。質のほうも高い文学性とは言えないが悪くはない。GLAが何教に近いのかはよくわからない。この本を読む限りは仏教に最も近いと思えるが、ネットを見てみるとキリスト教その他の影響のほうが大きいと書かれている。いずれにしろ信じている、伯母やその親戚の方々を見ても不幸というわけでもなく、明るく生きていらっしゃるのでそれはそれでよいのではないかと思う。

 この本に限らず最近多くの文化人が言っていることだが、今のようにやたら便利になっても環境や資源は壊滅的に消費、浸食されていて遠からず破たんすることは見えているわけで、遠からず悲惨で生きにくい時代が来るのだろう。そうなっても生きていける心のよりどころを現代人がそれぞれ持たなければならないのは言うまでもないと思う。

歴史を紀行する

2017/6/26 読了 

著者:司馬遼太郎              分野:歴史/随筆

文春文庫   

1976年10月 第1刷

1980年9月  第9刷

  

司馬遼太郎は、30歳くらいまでよく読んだ。ファンがとても多いとは思うが、本を読む人も減ってきたので、亡くなられてからは昔ほど読まれていないのかもしれない。内容は文句なく面白いのだが最近少し気を付けて読むようにはしている。日本では司馬史観が圧倒的な力を持っていて、日本の歴史上の人物像は彼の小説で決まっている気がする。乃木大将、坂本龍馬その他諸々、、、。それらももちろん司馬遼太郎が書いているのだから資料に基づいているだろうし、小説であれば著者の主観が入るのも当然だと思うが、あの歯切れの良い文章で決めつけられてしまうと頭の中はそのイメージでいっぱいになってしまうのはやや問題に思える。こんにちは多様性の時代なわけで、別の解釈も様々あるのだろうから、彼の作るイメージはあくまで小説の中のものと考えるようにしている。

 この本では、日本の12の地方の人間と風土が描かれる。45年以上昔に書かれているので、今より地方ごとの特色ははるかに濃厚であったと考えられる。どれも興味深いものだが、もっとも頭に残ったのは、金沢においては、前田氏が徳川時代に生き残るために謀反心なきことを示すために武断の面を押し隠し、ひたすら文化国家の道をまい進したため、異常に高度な芸術を発達させたことがある。父が石川県の出身で何度か金沢に行ったことがあるが東京にない洗練されて優雅な街並みや食器、和菓子などには以前から感心していた。最近北陸新幹線でにぎわっているのも自然な流れだと思う。

 もう一つ、印象的なのは、高知のはなしで、ここではもちろん坂本龍馬が出てくるが、こちらでは土佐弁がドイツ語のように日本の中でも最も論理的で緻密であり、それが坂本龍馬の思想を生んだことが述べられている。そういえば私の大学の友人で高知出身の人がいるが今思うとずいぶん議論好きの人で、今精神科の医者をしているがきっとあっているのだろう。

 風土というのは、昔ほどあらわでなくなってきてはいるが色濃い力を今でも持っていそうだが、私のように地方出身の両親が都会に出てきて、今やその出身地とのつながりもほとんどない私のような人間にはかなり希薄なものだ。今一度地方性というものを利用すれば最近増えている引きこもり対策にも利用できるのではないか。

 

善の研究

西田幾多郎著 岩波文庫

実家で大学一年くらいに買ったように思われる。何度も読もうとして跳ね返された。

今回、買ってから30年たって、おぼろげながらも概要をつかむことができたのはうれしい。この本は、岩波文庫の中でも最も売れた本らしい。昔の日本人には感心させられる。

 第1章は純粋経験について。W.ジェームス等から影響を受けた言葉で思考を経ない直覚的経験のことを言うらしいが、直接経験との厳密な意味の違いは読み直さないといけない。第2章実在論、第3章倫理学で、特に第3章では善の意味について様々な角度から述べられているので、結果として、人生論、幸福論になっている。第4章は宗教について述べられるが、ここでいう宗教はほとんど基督教なのは少し意外な感じがする。仏教についても深い理解があるのだろうが、これについては別の文献を読む必要があるのだろう。

 この本は、西田哲学の端緒に過ぎないらしいが私が次の内容に今後進むことがあるのかはわからない。ともかく、人生をとても勇気づけてくれる1冊。

日々の読書の備忘録

最近、25年ぶりくらいにわりと自由時間ができたので、せっかくだから今まで読めなかった家や自分の蔵書を読んでは処理しています。久しぶりに実家に住んでいるのだけど、半分ごみ屋敷状態でした。しかし、捨てるとなるといちいち母に文句を言われるので、一応書物の顔を立てておきたい。若いときはわからなかったことが、年を取って少しはわかるようになればいいと思っています。いつまで続くかわからないけど、書評(というほどでもないコメント)を記してみようと思います。

若いころは読書がとても好きだったのだが、長年技術者をやっていて豊富な語彙とは程遠い生活を送ってきたため、使いこなせる言葉が少ないと思う。せっかくの機会なので使える単語も増やしていきたい。

日記も記しています。こちらも良ければどうぞ。

トム君のブログ日記